前回はイザナギから三人の子どもが産まれる所まで物語を進めました。
今回は引き続き古事記の物語を解説していきます。
ちなみに前回イザナギから生まれた三人の子どもをまとめて三貴子と言います。
また前回は「天照大神」等の人名を漢字で表記していましたがルビを振るのが面倒くさいので読みやすさを重視で「アマテラス」等のカタカナ表記で書いていこうと思います。
三貴子
さて、前回イザナミから生まれた3人の子ども達はそれぞれ自身の統治するべき場所へと赴いていきました。
アマテラスは高天原へ
ツクヨミは夜之食国へ
スサノオは海原へ
高天原?夜之食国?と疑問が出てくると思いますのでここで解説しておきます。
高天原

高天原とは天上世界、つまり神様の住む世界ですね。
イメージ的には我々人間の住む世界のずっと上の方に神々の住む天上世界があると思って頂ければ大丈夫です。
要するにアマテラスは天の神々の住む世界の統治を任されたんですね。
このことからアマテラスは神々のトップとして扱われる事になります。
夜之食国

次に夜之食国、こちらは一般に夜の世界の事だと言われています。
アマテラスは太陽の神と崇められる事になるのでそれと対照的に夜の世界の神として位置づけられたのでしょう。
ただ、このツクヨミと夜之食国なんですが今後一切お話に関係してきません。
なのでここはめんどくさければ「ふーん、そういえば居たねそんなやつ」くらいの感じで頭の片隅に追いやっておいて貰って何の問題もありません。
海原

最後に海原、これはそのまま海の事ですね。シンプルです。
誓約
スサノオの嘆き
さて、それぞれ任された場所を統治する三人でしたが唯一スサノオだけがその役目を果たせていませんでした。
スサノオは統治の仕事を全くこなさず毎日泣いてばかりいたのです。
その結果海原は管理されず海は荒れ、大波が押し寄せ、まるで嵐のような状態が続いていたのでした。
その状況を見かねたイザナミはスサノオに尋ねます。
「どうして海はこんなに荒れているんだ、なぜ統治の責を果たさない?」
するとスサノオは答えます
「父さん、僕はね、亡くなって黄泉の国へ逝ってしまった母上に会いたいのです」
「イザナギに?」
「そうだよ!イザナギ母さんに一目会いたいんだ!それまで統治の仕事なんてしてられないよ!」
これにイザナギは怒って言います
「母さんは根の堅州国、死の世界に居るんだぞ、どんなに危ない事が待っているか分からない。」
「知ってるよ、それでも会いたい」
「だったら会いに行けばいい、だがその代わりもうここに戻る事は許さない」
こうしてスサノオは統治の仕事を離れ母へ会いに根の堅州国へ行く事を決めるのでした。
アマテラスとの誓約
根の堅州国へ向かう決意をしたスサノオでしたがそこへ向かう途中
「そうだ、母さんに会いに行く前に高天原に居る姉さんに挨拶をしていこう」
と思い立ち姉のアマテラスが統べる高天原へ向かいました。
しかしスサノオ程の強い神が意気揚々と走るとその場所は山や川が轟轟と騒めきたち海は荒れ大地は震えてしまいまるで嵐の通った後の様な有様となってしまうのでした。
一方高天原では嵐のようなスサノオが迫ってくる事に危機感を抱きます。
アマテラスは弟が何か良からぬ事を企んでこの地へやって来ていると考え高天原中を警戒体制としてやって来たスサノオと対峙します。
「スサノオ、ここへ何しに来たの?まさか高天原を奪おうなんて思ってないでしょうね?」
「違うよ姉さん!僕は母さんに会いに根の堅州国へ行くんだ!その途中に挨拶へ来ただけさ!」
「ホント?あまり疑いたくはないけれど…それを証明できる?」
「出来るさ!そうだな…なら僕と姉さんで誓約を建てよう、そうすれば僕に邪心が無い事が証明できるはずさ」
こうして二人は誓約を建てます。
誓約とは神が子を産む儀式の事です。
まずお互いの所有物を交換しそこに自分の唾を吐きかけ子を生み出します。
その結果どういう子が生まれたかによって生んだ神の性質を占うものでした。
「ほら!僕が生んだのは三人の優しい女の子さ!これで僕が侵略なんでバカな考えを持っていないことが証明できただろう!」
「そう…ね。分かったわ。スサノオ、貴方を歓迎します」
身の潔白を証明したスサノオは高天原へ迎えられしばらく滞在する事になるのでした。
2話のまとめ
第2話では三貴子の誕生から誓約をへてスサノオが高天原へ至るまでのお話を扱いました。
ここで高天原についての補足をしておきましょう。
恐らく多くの方が「高天原って具体的に何なの?」という疑問を持たれたと思います。
これにお答えすると【高天原とは記紀に登場する神々の住む世界】となります。
元々は神々やそれに近い伝承が大和民族にあったのでしょう。
それを奈良時代に歴史としてまとめて編纂しようとしたのが記紀(古事記と日本書紀)です。
そもそも記紀が編纂されたのは奈良時代で、この時代は中国や朝鮮等の外国と対等な一つの国として名実ともに力を付けようとする時代でした。
記紀編纂の目的は自国の歴史や伝承を整理することはもちろん、中国などの大国に対して日本は偉大な国だと示す事にあったのです。
つまり自分たちの歴史や伝承、文化を基に神々の住む世界というものを作り出す事で「神々の直系の子孫にあたる天皇が支配する国が日本なんだ、だから尊くて強い国なんだ」という事を示す役割が記紀にはあったと考えられます。
その為自分たちの伝承に基づき先祖を神格化して生み出したのが神々の物語や高天原の地だと考えられています。
また実際に高天原のモデルとなった場所も実在すると考える学者もいらっしゃいまして近畿や九州にその候補地が存在しています。
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