日本史 第7話 【神代7】

日本史

天孫降臨

天孫ニニギ

狩野探道著『天孫降臨』

出雲がアマテラスへと引き渡された事で天の神による葦原中国あしはらのなかつくにの統治が始まりました。

アマテラスは葦原中国の統治の役目を自身の孫であるニニギへ任せます。

その際に

スサノオがヤマタノオロチから手に入れた草薙剣くさなぎのつるぎ
アマテラスを岩戸から連れ出すために作られた八咫鏡やたのかがみ八尺瓊勾玉やさかにのまがたま

この3つの神器がアマテラスからニニギへと受け渡されます、これが現代に至るまで歴代天皇へと受け継がれている三種の神器です。

日本書紀ではさらに稲穂が与えられます。当時の日本人にとって米は非常に重要で神聖なものだったので神から与えられたモノという解釈があっても頷けます。

またアマテラスはこの時、重要な神勅をニニギへ託します。

※現代語訳『あの豊かな国は私の子孫が君主として治めるべき国です。私の孫である貴方が治めるのです。さぁお行きなさい。皇室の繁栄は永遠に続くでしょう。』

これを『天壌無窮てんじょうむきゅうの神勅』と言います。

神勅を受け三種の神器を携えたニニギは高天原から雲をかき分け地上へ向かい日向の高千穂に降り立ちました。

そして「この地は朝日を正面から受けて夕日に良く照らされる本当に良い土地だな」と言い、大きな岩の上に太い柱を立てて土台とし、巨大な神殿を建てたと言われています。

この伝説をアマテラスの孫が地上世界に降り立った事から天孫降臨と呼びます。

山の神

日向の高千穂に降り立ったニニギは海辺で美しい女性と出会います。

「君、どこの生まれだ?名前は?」とニニギが問うと

「私は山の神の娘のコノハナサクヤヒメと申します」

「俺はニニギ。天の神の一族だ、君が気に入った。俺の嫁に来ないか」

「父の許しがあれば…」

二人は山の神に結婚の許しを貰うと婚姻します、この時山の神の計らいでコノハナサクヤヒメの姉であるイワナガヒメも共に嫁に貰う事となりました。

しかしイワナガヒメは容姿が悪くニニギは「君は好みじゃない」と彼女を追い返してしまします。

これに対し山の神は

「バカな奴だな、二人を送ったのはコノハナサクヤヒメを側に置けば木に花が咲くが如く繁栄できる様に、イワナガヒメを側に置けば岩の様に長い寿命を得られる様にとの意味を込めたモノだったのに」

「それを送り返したんだ、永遠の寿命は得られないだろう」

こういう訳で神であるニニギ以降の天の神の血を引く一族には寿命が出来てしまった。と伝えられています。

ニニギが婚約したのは山の神の娘でした。これは天の神であるニニギが山の神の血筋を受け入れる事で日本を治める力と正統性を手に入れたと言う事ではないでしょうか。日本は山だらけですからね。ニニギの子である山幸彦は海の神の子と結婚して海の神の血筋も獲得しますし、その孫である神武天皇は大和の神の子と結婚します。この様に結婚によって争わずに国を治める為の力を手に入れているのも日本神話の特徴です。

火中出産

コナハナサクヤヒメと一夜を共にしたニニギでしたが、その一夜でコナハナサクヤヒメは子どもを授かりました。

「一夜で妊娠するのはおかしい、他の男が居たんだろう」とニニギは詰めかけ、2人のケンカが始まってしまいます。

口論が続き潔白を認めて貰えないコノハナサクヤヒメは産屋に駆け込み、入り口を塞いで出入りが出来ないようにして中に籠って火をつけてしまいます。

驚いて戸を開けようとするニニギへ

「もし生まれる子たちが天の神の血を引く貴方の子ならばこの火中でも見事に御生まれになるでしょう、そうでないのならここで死ぬだけです」

そう言って火が荒ぶる産屋の中で出産を始めます。

火を消して産屋の戸を破り中に入るとそこには三人の子どもを抱いたコノハナサクヤヒメがほほ笑んでいたのでした。

子供たちは「ホデリ」「ホオリ」「ホスセリ」と名付けられ立派な青年へと成長していきました。

海幸彦と山幸彦

二人の兄弟

ニニギの息子たちは成長し、兄のホデリは海幸彦、弟のホオリは山幸彦と呼ばれるようになります。

ある日二人は思い付きから自分たちの釣り針を交換する事にしました。道具の使い心地が気になったのでしょう。

しかし弟の山幸彦はうっかりと兄の釣り針を魚に食いちぎられ無くしてします。

困った山幸彦は自身の剣を解体し、釣り針を大量に作って兄へ差し出しますが「あの釣り針じゃなきゃダメなんだ」と納得を得られません。

海の神

山幸彦はどうしたものかと海辺で途方に暮れているとシオツチという老人が現れ「どうかしたのか?」と事情を尋ねます。

ありのままを語るとシオツチが答えます。

「わかりました、ではこの船を差し上げますからこれで海の神の宮殿までお行きなさい。海の神がきっと力になってくれるでしょう」

言われた通り海の宮殿へ向かうと宮殿の門で美しい女性を見かけます。

女性は照れて門の中に入ってしまいます。

「お父様、門のところに男性が立ってらっしゃいます、お客様ですか?」

「ほう、もしやあれは天の神の一族ではないか?こちらへ呼んで来い」

山幸彦は宮殿に招かれ身の上を説明すると海の神にとても気に入られ、しばらくここへ滞在する様に勧められます。

海の宮殿はかなり居心地がよく山幸彦は目的も忘れて長い間ここで過ごしてしまい、しかも海の神の娘のトヨタマヒメと結婚までしてしまいます。

しばらくの後「しまった、俺がここへ来たのは兄さんの釣り針を探すためだった」と目的を思い出した彼はトヨタマヒメにここへ来た事情を説明すると「わかりました」と海の神へ取り合ってくれました。

海の神は大海中の大小の魚を集めると「釣り針が刺さった者はいないか」と問いかけ、釣り針の刺さった鯛を見つけ出し山幸彦はついに兄の釣り針を回収できました。

海幸彦との闘い

鵜戸神宮が古事記編さん1300年を記念して一般公開した潮満珠(しおみつたま)と潮涸珠(しおふるたま)

海の神は言います。

「さて山幸彦、そなたは海の神の娘を嫁にしている、つまり水を多く手に入れられる力を手にしている訳だ。田を耕すに十分な水を得られて大いに富むだろう」

「ありがとうございます。」

「問題はそなたの兄上だ。富んだそなたを恨んで軍勢を率いて田を奪いに来るであろう。その時はこの潮満珠しおみつたま潮涸珠しおふるたまを渡しておくからこれで追い払いなさい」

地上へ戻った山幸彦は兄へ釣り針を返し海の神の力を使い田を大いに耕します。

すると予想通り稲作が振るわない海幸彦は山幸彦の田を狙って攻撃を仕掛けてきました。

迎え撃つ山幸彦は塩満珠を掲げると大量の水が海幸彦の軍勢に襲い掛かり十分に打撃を与えた後潮涸珠を掲げると水は引いていく。

この力の前に海幸彦は降伏し、山幸彦に仕える事を約束し戦いは終わりました。

その後、トヨタマヒメは出産し子を産みます。

その名をアマツヒコと言い彼はトヨタマヒメの妹であるタマヨリヒメと結婚します(叔母さんと結婚したのですね)

そこから生まれた子供は4人。

イツセ
イナヒ
ミケヌ
そしてカムヤマトイワレビコ、彼が後の神武天皇です。

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