高松塚古墳と壁画の歴史

古墳

高松塚古墳について

今回は高松塚古墳について紹介しましょう。

高松塚古墳は奈良県明日香村に位置し、飛鳥時代後期(7世紀末~8世紀初頭)に築造されたとされる円墳で、直径約23メートル、高さ約5メートルの規模を持ちます。この古墳の最大の特徴は、石室内部に描かれた彩色壁画で、四神(青龍、白虎、朱雀、玄武)や男女の群像が描かれており、唐代の中国や朝鮮半島の文化的影響を示す貴重な資料となっています。

1972年の発見以来、日本の文化財として保護されており、出土品から被葬者が高い身分の人物であったことが推測されています。
ただし、壁画はカビや劣化による損傷が深刻で、現在は修復が進められており、古墳内にはレプリカが展示されています。周辺は高松塚古墳公園として整備されており、飛鳥時代の歴史や文化を学ぶ観光地として多くの人々が訪れています。

歴史

高松塚古墳からの明日香村展望

高松塚古墳の建造

高松塚古墳が建造されたのは7世紀末から8世紀前半(670年~750年頃?)と考えられており
飛鳥時代に当たります。
この時代東アジアは激動の時代であり、日本は動乱を生き残る為、天皇を中心とした強力な中央集権国家を作り上げるべく、大陸の進んだ技術や法律、文化を吸収しようとしていました。

その為、この高松塚古墳は唐や朝鮮半島の文化的影響を強く受けており、
特に後述する高松塚古墳の彩色壁画には、唐代中国の絵画技術や朝鮮半島の装飾文化の影響が見られます。

被葬者については詳しく分かっていないですが天文や政治に関与した高位の貴族であった可能性が高いと考えられています。

発掘調査

1972年、奈良県明日香村の地元民が生姜の貯蔵の為に地面に穴を掘っている所、何か大きな石のようなモノにぶつかりました。
これがきっかけとなり発掘調査がはじまります。

発掘調査では、まず墳丘の外部構造が明らかにされて円墳であることが確認され
その後、横穴式石室が発見されると同時に内部の調査が行われる事に、
そして石室内からは四神(青龍、白虎、朱雀、玄武)や男女群像が描かれた彩色壁画が発見されました。これこそ有名な高松塚古墳壁画です。
この壁画は飛鳥時代の服飾や儀礼を知る上で貴重な資料となりました。

しかしこの壁画は岩に直接書かれたモノの為、発掘後はカビ等の湿気による劣化が懸念され始めます。
1990年代になると、壁画の劣化が深刻化し、国主導で壁画の精密な調査と修復作業が開始されました。さらに壁画の保存環境を改善するため、2007年には石室から壁画を取り外し、別の保存施設で修復が行われています。
現在は高松塚古墳壁画修理作業室に保存されており、毎年行われている明日香村で修理室の公開行事でその姿を拝むことが出来ます。

高松塚古墳壁画

壁画の構成

高松塚古墳の壁画は、石室内の壁面と天井に描かれた彩色画で構成されており、その内容は四神(東西南北の守護神)、群像(複数の男女の人物像)、および星宿図(天井画)で構成されています。
まず、四方の壁には中国の陰陽五行思想に基づく四神が描かれ、東壁に青龍、西壁に白虎、南壁に朱雀、北壁に玄武がそれぞれ配置されています。
これらは石室内を守護する神獣として描かれ、その表現は唐代中国の影響を強く受けています。

南壁と北壁には、それぞれ複数の男女群像が描かれています。
これらは儀礼や行列を表現していると考えられ、人物たちは飛鳥時代の貴族的な衣装を身にまとっています。
その衣装や姿勢、配置から、当時の宮廷文化や社会的階層がうかがえます。人物の顔や装飾品には細やかな描写が施されており、当時の技術の高さを示すとともに、飛鳥時代の服飾文化の貴重な資料となっています。

さらに、石室の天井には星宿図が描かれており、これは当時の天文学や占星術の知識を反映したものです。
星宿図は夜空の星々を象徴的に表現したもので、被葬者の地位や宗教観、宇宙観を象徴していると考えられます。これらの壁画は、全体として飛鳥時代の文化や思想、国際的な影響を示す美術的・歴史的に重要な作品群です。

壁画から読み取れる飛鳥時代

高松塚古墳の壁画は、日本初の彩色壁画として、飛鳥時代の高度な絵画技術や文化的特徴を象徴する重要な遺産です。この壁画は、石室内の壁面に描かれた四神(青龍、白虎、朱雀、玄武)や、天井に描かれた星宿図、そして南北の壁に描かれた群像を含むもので、内容や技術面で日本美術史に大きな影響を与えました。

まず、四神や星宿図には、中国や朝鮮半島から伝わった陰陽五行思想や天文学の知識が反映されており、飛鳥時代の日本がこれらの先進的な文化を積極的に取り入れていたことが明らかになっています。特に、四神はそれぞれ東西南北を守護する神獣として描かれ、その鮮やかな色彩と構図から、当時の絵画技術の高さがうかがえます。

また、群像に描かれた男女の人物像は、飛鳥時代の宮廷文化や社会構造を具体的に伝える貴重な資料です。人物たちは、豪華な衣装や装飾品を身に着けており、唐代中国の影響を受けたデザインが確認されています。これにより、当時の服飾や儀礼、社会的階層の在り方が視覚的に再現され、飛鳥時代の貴族生活や文化的美意識を深く理解する手がかりとなっています。

さらに、天井に描かれた星宿図は、古代の天文学や占星術の知識が反映され、被葬者の地位や宗教観を示すとともに、宇宙の秩序や霊魂の安寧を願う思想が込められています。このように、壁画全体には、死者の霊魂を守り、宇宙の秩序と調和することを願った当時の人々の宗教的観念や世界観が色濃く表現されています。

高松塚古墳の壁画は、単に美術的価値を持つだけでなく、飛鳥時代における日本の国際交流や文化の成熟度、さらに宗教観や宇宙観を示す重要な資料であり、日本の古代史や文化史を深く理解する上で欠かせない存在です。

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